P沼的プログラミング

PnumaSONの雑記

『我、退職する』の補足をする

 はじめに

長編怪文書として作成された「我、退職する - P沼的プログラミング」は長編にもかかわらず相当量の省略がされて記載されたものである。そのため、あとあと確認したところ、誤解を招く可能性が大いにあるので補足を行うこととした。

 補足も長編怪文書となることを避けるため、Q&A方式での回答を行う。

 

 

Q. 結局何が起きたのか簡単に教えて?

会社全体としては

 退職者が沢山出る→仕事が増えたのに給料が上がらない→退職者が沢山出る

本編に記載はないですが、初めに他部署で退職者が沢山出たのは、ユーザから辛辣な批判を受けるような質の悪いゲームをリリースしたことがきっかけかと思います。そのプロジェクトはかなり悪環境で、上位者の質が悪かったと聞いています。

 

個人としては

 総務や人事や部長や社長になんやかんや問題を訴えたけど聞く耳もたれなかったから退職じゃあ

 

Q. 離職に至ったもっと大きな要因は何?

会社に自浄効果がないと感じたことです。

優秀な人材が多数退職し、残ったうちの優秀な人材に仕事が集中するという状況が続いていました。歯止めがかかる様子がなかったので、残っていてはやばいという認識がありました。

 

Q. ブラック企業だったの?

おそらく違います。

ブラック企業と言うのは仕事に対して対価が払われない企業を指していると理解しています。この理解の場合、元弊社では人並みの給料、業界標準以上の給料が支払われていたので一般的なブラック企業とは異なると思います。

まあ、三六協定違反で警告と監査が入っていたという話や部署によってはパワハラ発言がしばしば行われていたということを考慮するとブラックなのかもしれませんが。

 

Q. 絶対能力評価主義者なの?

違います。

評価者がものすごい優秀な方でない限り、絶対能力評価は正しく機能しないと思っています。そうであっても一人一人よく観察していなければいけないので、評価者の負担がかなり大きくなります。それほど優秀な人ならそんなことをさせるより、他の仕事をさせたほうが会社の利益に貢献できると思います。

年功序列を主軸にしていたほうが、まだ社員の未来への展望が開けており、長期雇用につながることが多いと考えます。絶対能力評価で給与が上がらない場合はその給与でこれから未来永劫我慢しろと言われているのとほぼ同じですから。

今回の問題点は、会社が評価制度を絶対能力評価であると定義していながら、そのようにおこなわれていなかったということです。

 

Q. じゃあどういう評価制度なら良かったと思うの?

個人的には年功序列で未来への安心感を持たせつつ、賞与で差をつけるというのが結局無難なのではと思っています。

いま能力がないからといって、過去能力がなかったかどうかは分かりません。つまり、枯れてしまった技術なだけで、当時は大いに貢献した可能性もあるということです。年功序列でも現在の能力評価でもこういった評価を正しく行うことはできません。

そのため、能力評価したい場合は、年功序列に加えて、過去の能力に拠って評価されたポイントをずっと加算方式で持つというような仕組みがよいと思われます。

ただ、このポイントは給料にのみ反映されるべきで、階級に反映してはいけません。現在使えないスキルセットの人材を上位階級に据えることは利益を損なうことになるからです。

過去の成果を尊重しつつ、尊敬しあえる環境づくりが大切です。

 

Q. T氏の能力が足りていないって言うけど、能力ってそう簡単に測れなくない?

その通りです。

能力は簡単に測れるものではありません。まして部署が違えば、なおのことその通りです。個々人保有しているスキルセットが異なるので、ある知識が欠けているからといって、総合的な能力が低いことを表すわけではありません。しかし、T氏の欠けていた能力は、まさにそのことを理解する能力です。この能力はいい人材を確保し、利益率を上げるためには欠かすことのできない能力です。階級が低いならなくてもさほど問題にならないのですが、マネジメント職では必須レベルの要素です。

他所の部署には他所の部署のスキルセットがあることや事情を理解し、お互いを尊敬しあって仕事をすることで和を保ち、利益を上げていく必要があるのですが、彼は他部署や低階級の人たちを見下し、様々なスキルセットを保有した人材を流出させました。

また、プログラマであれば誰でも分かるような事柄を理解していないこともあり、その点については誰でも簡単に測れた部分かと思います。例えば、皆が数学を扱って仕事をしているときに、線形代数とか数値計算が分からないとかそういう次元ではなく、四則演算が分からない人がいたら、スキルセットどうこうなどではなく、それは能力が低いと言われても致し方ないと感じます。本編に記載していませんが、そういうレベルの話です。それも一つではなく複数あったためです。

 

Q.  T氏のことどう思っているの?

本編に記載の通り、やりとりの際は怒り心頭でしたが、彼もまた人事制度の犠牲者の一人です。勤続年数や年齢、彼の性格もあり、誰も彼の能力や行動に問題があることを諭す人がいなかったのではないかと思います。やたらと自尊心の高い人であり、過去の誤った成功体験から正しい自信のつけ方を学ぶ機会を得られなかったのもある意味で会社の問題でもありました。

本編後半に記載の通り、道を示し、正すべき人たちがそれを怠ったことが問題で、彼のことはもう仕方がなかったなと思いつつあります。

 

Q. 能力が低い人のこと嫌ってますか?

嫌っていないと言いたいところですが、そういう節はあるかもしれません。

ただ、弁解しておきたいのは、プログラミング経験が皆無でプログラマになった同僚がいましたが、彼のことを嫌ったことはありません。

教育には他の人より手間がかかり、面倒くさいなあと思ったのは事実ですが、彼に学ぶ意思があり、聞き伸びる姿勢があったためです。

私が嫌っているのは技能の有り無しではなく、物事や人に対する姿勢な気がします。それを能力に当てはめるなら、他人を慮る能力が低い人を嫌っていると言えるかもしれません。

 

Q. でも能力が低い人がいると邪魔だみたいな発言してることない?

邪魔なのと嫌いなのは違います。

利益率を上げるため、いいゲームを作るためには邪魔ですよと言っているだけで嫌いかどうかは関係はありません。逆にどんなに能力が高くても状況次第では邪魔になることがあり得ます。例えば社内の対立は大抵の場合、能力の高い人によって引き起こされるものです。対立による停滞は利益率を下げるので邪魔です。長い目でみれば必要な対立もあるので一概には言えないときももちろんあります。

人は最も貢献可能な場所にいるほうがよいというのがそもそもの考えです。 状況に関わらず常に邪魔な人はなかなかいないと思います。

 

Q. 社内のマネジメントってどうなってたの?

元弊社に関わらず、多くのゲーム会社で似たような事例があるようですが、マネジメントの質は低いことが多いです。元々ゲームを作りたい人たちが集まっていて、自分がいいゲームが作れればそれで満足という人材も多く、他人の管理や評価はある程度どうでもいいと思っている節があるからです。

「このままだと残業が月100時間越えになりそうです」という報告に対し、マネージャはただ「頑張って」といっただけで仕事を分配しなかったという話もあったりします。そのくらい他人の仕事に興味がないです。

この体制は問題がありそうですが、いいゲームを作り続けているときであれば、さほど問題になりません。いいゲームが作れているということがすべての免罪符になるからです。

では、いいゲームが作られないときはどうなるでしょうか?

いいゲームが作れているからどうでもいいと思っていた部分にいっせいに目が行きます。また、いいゲームを作るのに妨げになっているのは何か考え始めます。それが、ちょうど元弊社に起きたことです。

 

Q. そんな中、人事部はなにをしていたの?

火に油を注いでいました。

内部がぐずぐずになっているところで、新入社員の給与をかなり高給にしました。

人が減ってしまったので、優秀な人材を沢山確保するために行ったのかと思いますが、内部の社員の給与を変えないまま行ったため、退職者が増加したようです。

 本編で人事部に対して信用していないような節があるのは、この件ともう一件の別件と信頼していた人事社員が辞めた件が理由です。

 

Q. どうするのが正解だったと思いますか?

正解は正直分からないです。

内部でやれることと言えば、部長をあてにせずに、本編に記載のように退職届を出す前に一戦かますほうがよかったと思っています。

退職は一つの悪くない解法だったと考えています。

 

(以下追記:2020/02/22)

この追記を行ったのは新型コロナウィルスに関して指揮系統を乱す越権行為を行った方がおられたという話を聞いて、この件はそうではないよ、またそうすべきではないよということを伝えるためです。

 

Q. 社長へのメールは越権行為にあたらないの?

これは前職にあっては微妙なラインになります。

本編に記載の通り、社長からこの機能についての言及があり、必要に応じて申告してくださいという旨の話が行われているためです。

もちろん、気軽に使っていいものではないし、私の進言を上に伝えたくない人にとってはとんでもない越権行為であると思われたと思います。

(以前、私以外の人が別の方法で直接訴えたところ、それに対し上位陣が憤慨していたという噂を聞いたことがあります)

この機能を使わない方法を取ろうとすると、年に1回しかない職場面談のときに申請を出す形になります。

上記の方法を取るのがシステム上はもっともいいのではありますが、私がタイミング的にこの時期を逃したため、この方法を取りませんでした。

また、この方法はかなり不確実な方法であり、手前で却下されることもあります。ことなかれを望む人が承認ルートのいずれかの位置にいる場合は困難でしょう。

社内システム的に(少なくとも社長は)認可している機能であるため、その行為そのものの問題の程度はそれほど大きくないと思っています。

 

Q. 社内の混乱を招いたりしたのでは?

それはないと思います。

本編に記載の通り、「人事評価制度改正の提案」として一定の書式にのっとって提出しています。

一定の書式というのは、「現在起きていること」をタイトルとし、「実例」、「これによって引き起こされる問題」、「想定される解決方法」という形でまとめた文章です。

実例が伴った文章となっているので、会社が行うべきことは、「これによって引き起こされる問題」が会社にとって問題だと感じた場合に「実例」が事実であったかどうかのヒアリングを「実例」の部署に行うだけです。

限定的な人材に対してヒアリングを実施することを混乱というならばそうかもしれませんが、一般的にはそうは言わないと思います。

その結果、「想定される解決方法」やその他の解決策が取られるとして、それを混乱と呼ぶのなら、それはたぶん会社の変化が不都合な人が騒ぎ立てているだけで、最終的には会社の上位者の合意によって実行されることなので、無秩序な悪しき混乱ではないと考えます。

 

Q. 新型コロナのあの件との違いはどこ?

私は社内に存在する認可された機能を用いて、会社の運営にあたる上位者に進言をしたのに対し、彼は認められた機能ではないもので、組織と関係のない人間に拡散したということです。

私は一般からすれば越権的な行為をしているものの、常に提案の姿勢を取り、あくまで上位者の判断を促すというフローを取りました。

彼もそれに近い行為を行ったうえで、受け入れられなかったためみたいな話があるようです。

 

Q. 新型コロナのあの件はどういう対処をすべきだったと思う?

問題が事実なら改善のために最善を尽くして行動することに関しては賞賛すべきことかもしれません。

ですが、組織内の事情や状況をまるで理解していない無学な一般人やマスコミを味方にする行為は褒められた行為ではありません。

状況の分からない人間に字面だけみせて、数の暴力で叩こうという方法は改善とは遠い方法ですし、仮にこれで意見が通るようになってしまえば、どんな誤った内容でも適当に尾ひれをつけてマスコミを味方にすれば通るというろくでもない組織が出来上がってしまいます。

正しい内容であったとして、組織観としては提案を否定しないと危険であるという認識から、内部の否定派が多くなりがちだろうと想像できます。

また、特に緊急時であればトップダウンを守ることは非常に大切なことです。

緊急時は正しい事よりも無駄でも誤解なく機能することが優先されることもしばしばあります。

そのため、何か行動を起こすにしても、より権威のある人に相談をし、問題を共有してもらうというのが良かったと思います。